歯列矯正が抜け毛の直接的な原因であるという医学的根拠は明確には確立されていません。
しかし、矯正治療に伴う精神的・身体的ストレス、装置による金属アレルギー、食事のしにくさからくる栄養不足、睡眠の質の低下などが間接的な要因となる可能性があります。
これらの要因が複合的に絡み合うことで頭皮環境やヘアサイクルに影響を与え、結果として抜け毛が増えたと感じる方がいるのは事実です。
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- 歯列矯正と抜け毛の直接的な因果関係と、考えられる間接的な原因
- 矯正中に自分で実践できる具体的な抜け毛対策
- ワイヤー矯正とマウスピース矯正における抜け毛関連リスクの違い
- 抜け毛が改善しない場合の本当の原因と専門的な対処法
目次
歯列矯正と抜け毛に直接的な因果関係はないとされる理由
まず、最も大切な点として、歯列矯正の治療行為そのものが、直接的に毛根を攻撃したり、脱毛を引き起こしたりするという医学的な証拠は現時点で見つかっていません。
国内外の多くの研究や論文を調査しても、歯列矯正を抜け毛の直接的な副作用として挙げている信頼性の高い報告は見当たらないのが現状。
歯科矯正学の教科書や、皮膚科学の文献においても、この二つの関連性について明確に記述されているものはほとんどありません。
もし、歯列矯正が誰にでも抜け毛を引き起こすような明確な原因であれば、それは治療における重大なリスクとして広く認知され、治療開始前に必ず説明されるはずです。
しかし、実際にはそのような説明が一般的でないことからも、直接的な関係性は低いと考えるのが妥当でしょう。
では、なぜ「歯列矯正を始めたら抜け毛が増えた」と感じる人がいるのでしょうか。
それは、直接的な原因ではないものの、矯正治療という長期間にわたるプロセスが、私たちの心と身体に様々な「間接的な影響」を及ぼすためと考えられます。
次章からは、その間接的な要因について、一つずつ詳しく見ていきましょう。
なぜ歯列矯正で抜け毛が増えると感じるのか?考えられる5つの間接的な原因
歯列矯正が抜け毛の直接原因ではないとしても、その過程で起こりうる身体の変化が、髪の毛のサイクルに影響を与えている可能性は否定できません。
ここでは、その代表的な5つの間接的要因について解説します。
1. 精神的・身体的ストレスによる影響
歯列矯正は、残念ながら「快適な治療」と断言できるものではありません。
この治療に伴う様々なストレスが、抜け毛の一因となっている可能性が考えられます。
矯正治療に伴う多様なストレス要因
歯列矯正を受ける方が経験するストレスは、一つではありません。
痛みや違和感
装置を装着した直後や、調整(ワイヤーを締め直すなど)を行った後の数日間は、歯が浮くような痛みや、締め付けられるような違和感を伴います。
この痛みが食事や睡眠の妨げになることも少なくありません。
食事の制限
硬いものや粘着性のあるものが食べにくくなるため、食の楽しみが制限されるストレスがあります。
好きなものを自由に食べられない状況が続くことは、精神的な負担となるでしょう。
見た目へのコンプレックス
特に表側のワイヤー矯正の場合、装置が見えることに対してコンプレックスを感じ、人と話したり笑ったりすることに抵抗を覚えてしまう方もいます。
口内炎の発生
装置が頬や舌の粘膜に擦れることで、口内炎ができやすくなります。
絶えず口の中に痛みがある状態は、大きなストレス源です。
長期にわたる治療期間
歯列矯正は、一般的に1年半から3年程度と、非常に長い期間を要します。
終わりの見えない治療に対するプレッシャーや、「本当に綺麗になるのだろうか」という不安もストレスに繋がります。
ストレスが抜け毛を引き起こすメカニズム
では、これらのストレスがどのようにして抜け毛に繋がるのでしょうか。
私たちの身体は、強いストレスを感じると、それに対抗するために自律神経やホルモンのバランスを変化させます。
自律神経の乱れと血行不良
ストレスは、交感神経を優位にさせます。
交感神経が活発になると、血管が収縮し、全身の血流が悪化する傾向にあります。
頭皮の毛細血管も例外ではなく、血行不良に陥ることで、髪の毛の成長に必要な酸素や栄養素が毛根(毛母細胞)まで十分に行き届かなくなってしまうのです。
栄養不足に陥った髪の毛は、十分に成長できずに細くなったり、本来の寿命を全うする前に抜け落ちてしまったりします。
休止期脱毛症の発症
強い精神的または身体的ストレスを経験した数ヶ月後に、髪の毛が一斉に休止期(成長が止まる期間)に入り、大量に抜け落ちてしまう「休止期脱毛症」という症状があります。
歯列矯正の強い痛みや精神的な苦痛が、この休-止期脱毛症の引き金となる可能性も考えられるでしょう。
このように、歯列矯正に伴う複合的なストレスが自律神経を乱し、頭皮の血行を悪化させることが、抜け毛を感じる大きな要因の一つと言えます。
2. 矯正装置による金属アレルギー
次に考えられるのが、矯正装置に使用されている金属に対するアレルギー反応。
これは、特定の体質の方にとっては非常に重要な問題となります。
矯正装置に含まれる金属の種類
一般的に、ワイヤー矯正で用いられるブラケット(歯に接着する装置)やワイヤーには、以下のような金属が含まれていることがあります。
- ニッケル
- クロム
- コバルト
- チタン
これらの金属は、安価で加工しやすく、強度も高いため広く使用されています。
しかし、中でもニッケルやクロム、コバルトは、金属アレルギーを引き起こしやすい代表的な金属として知られています。
金属アレルギーが引き起こす症状
金属アレルギーと聞くと、アクセサリーを付けた部分の皮膚が赤くかぶれる、といった接触皮膚炎をイメージする方が多いかもしれません。
もちろん、矯正装置が直接触れる口の中の粘膜に、口内炎やただれ、腫れといった症状が現れることもあります。
しかし、金属アレルギーの症状は、接触部分だけに留まらない場合があります。
「全身性金属アレルギー(全身性接触皮膚炎)」と呼ばれるもので、口の中の粘膜から溶け出した金属イオンが、唾液と共に体内へ吸収され、血流に乗って全身を巡ります。
そして、汗として排出される際に、体の様々な部位の皮膚でアレルギー反応を起こすのです。
その症状の一つとして、「脱毛」が報告されています。
頭皮でアレルギー反応が起これば、頭皮環境が悪化し、炎症やかゆみを伴う脱毛症に繋がる可能性があるのです。
口の中のトラブルだけでなく、原因不明の手のひらや足の裏の湿疹、全身の倦怠感、そして抜け毛といった症状が現れた場合、矯正装置による金属アレルギーを疑う必要があります。
アレルギーが疑われる場合の対処法
もし、歯列矯正を始めてから原因不明の皮膚症状や抜け毛に悩まされているのであれば、まずは皮膚科を受診し、「パッチテスト」を受けることをお勧めします。
パッチテストは、原因と思われる金属の試薬を皮膚に貼り付け、アレルギー反応が出るかどうかを確認する検査です。
この検査で陽性反応が出た場合は、速やかに矯正治療を受けている歯科医師に相談してください。
アレルギーの原因となっている金属を含まない装置に変更するなどの対策が必要となります。
近年では、金属を一切使用しない矯正方法も選択できますので、後ほど詳しく解説します。
3. 栄養不足・食生活の変化
髪の毛は、私たちが日々摂取する栄養素から作られています。
そのため、食生活の乱れは、髪の健康に直接的な影響を及ぼします。
歯列矯正中は、意図せずして栄養不足に陥りやすい状況が生まれます。
矯正中の食事がもたらす栄養の偏り
歯列矯正中、特に治療の初期段階や調整直後は、食生活が大きく変化します。
- 痛みに伴う食欲不振:歯が痛むことで、食事そのものが億劫になり、食事量が全体的に減ってしまうことがあります。
- 咀嚼(そしゃく)困難:装置に慣れるまでは、食べ物をうまく噛み砕くことができません。また、硬いものや繊維質な野菜などを避けるようになるため、自然と柔らかいものばかりを選んでしまいがちです。
- 食事内容の偏り:結果として、うどんやおかゆ、ゼリー飲料、スープといった、あまり噛まなくても食べられる炭水化物中心の食事に偏ってしまう傾向があります。
髪の成長に不可欠な栄養素の不足
このような食生活の変化は、髪の毛の成長に欠かせない特定の栄養素の不足を招く危険性があります。
タンパク質(ケラチン)
髪の毛の約90%は、「ケラチン」というタンパク質で構成されています。
肉や魚、卵、大豆製品などの摂取量が減ると、髪の毛の主成分そのものが不足し、髪が細くなったり、弱くなったり、ツヤがなくなったりする原因となります。
亜鉛
亜鉛は、タンパク質(ケラチン)を髪の毛に合成する際に不可欠なミネラル。
亜鉛が不足すると、うまく髪の毛を作れなくなり、脱毛症を引き起こすことがあります。
味覚を正常に保つ働きもあるため、亜鉛不足はさらなる食欲不振を招く悪循環にも繋がります。
牡蠣やレバー、牛肉などに多く含まれますが、矯正中は食べにくい食材かもしれません。
鉄分
鉄分は、血液中のヘモグロビンの成分となり、全身に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。
鉄分が不足すると貧血になり、頭皮の毛母細胞へも十分な酸素が供給されなくなります。
これにより、髪の成長が阻害され、抜け毛や薄毛の原因となります。
特に女性は月経により鉄分を失いやすいため、意識的な摂取が必要です。
ビタミン類
ビタミンB群は頭皮の新陳代謝を促し、ビタミンCはコラーゲンの生成を助けて頭皮環境を健やかに保ち、ビタミンEは血行を促進する働きがあります。
野菜や果物の摂取が減ることで、これらのビタミンが不足し、頭皮環境の悪化に繋がる可能性があります。
このように、矯正治療による食事内容の変化が、髪の健康を維持するための栄養基盤を揺るがしかねないのです。
4. 虫歯や歯周病の悪化による口腔内環境の変化
歯列矯正中は、装置の周りが複雑な構造になるため、どうしても歯磨きがしにくくなります。
これにより、虫歯や歯周病のリスクが高まることが知られていますが、この口腔内のトラブルが、巡り巡って抜け毛に影響を与えるという考え方もあります。
矯正中のオーラルケアの難しさ
ブラケットやワイヤーの周りには、食べかすや歯垢(プラーク)が非常にたまりやすくなります。
通常の歯ブラシだけでは完全に汚れを除去することは難しく、タフトブラシ(毛先が小さなブラシ)や歯間ブラシ、デンタルフロスなどを駆使した、より丁寧なケアが求められます。
このケアを怠ってしまうと、虫歯菌や歯周病菌が繁殖し、口腔内の衛生状態が悪化します。
口腔内の炎症が全身に及ぼす影響
虫歯が進行して歯の神経(歯髄)まで達したり、歯周病が悪化して歯ぐきから出血や膿が出たりすると、口腔内は慢性的な炎症状態となります。
近年の研究では、この口腔内の慢性的な炎症が、全身の健康に様々な悪影響を及ぼすことが分かってきています。
例えば、歯周病菌が作り出す毒素や、炎症によって生じる物質(炎症性サイトカインなど)が、歯ぐきの血管から血流に乗って全身を巡ることがあります。
これらの物質が全身の免疫システムに影響を与えたり、他の臓器で新たな炎症を引き起こしたりすることが指摘されています(歯周病と糖尿病や動脈硬化の関連性が有名です)。
このメカニズムを髪の毛に当てはめてみると、口腔内の炎症性物質が血流を介して頭皮に到達し、毛根周囲で微細な炎症を引き起こしたり、頭皮の免疫バランスを崩したりすることで、正常なヘアサイクルを乱し、抜け毛に繋がる可能性はゼロではないと考えられます。
これはまだ研究途上の分野ではありますが、お口の健康が全身、ひいては髪の毛の健康にも繋がっているという視点は、非常に重要です。
5. 睡眠不足
最後に挙げるのが、睡眠の質の低下。
良質な睡眠は、心身の回復だけでなく、髪の毛の成長にとっても極めて重要です。
矯正装置がもたらす睡眠の妨げ
前述の通り、矯正装置による痛みや違和感は、日中だけでなく夜間の睡眠をも妨げることがあります。
- 痛みによる入眠困難:歯が締め付けられるような痛みで、なかなか寝付けない。
- 夜間の中途覚醒:寝ている間に無意識に歯を食いしばってしまい、痛みで目が覚めてしまう。
- 装置の違和感:口の中に異物がある感覚に慣れず、眠りが浅くなる。
このような状態が続くと、慢性的な睡眠不足や、睡眠の質の低下に繋がります。
睡眠と髪の成長の深い関係
髪の毛の成長は、睡眠中に活発に行われます。
特に、入眠後に訪れる深いノンレム睡眠の間に、「成長ホルモン」が最も多く分泌されます。
成長ホルモンは、その名の通り体の成長を促すだけでなく、日中に受けた細胞のダメージを修復し、新陳代謝を活発にする働きを担っています。
頭皮においては、毛母細胞の分裂を促進し、髪の毛を太く、健康に育て上げるために不可欠な存在です。
睡眠不足に陥り、成長ホルモンの分泌が不足すると、毛母細胞の働きが鈍くなります。
その結果、髪の毛の成長期が短くなったり、新しく生えてくる髪が細く弱々しくなったりして、抜け毛が目立つようになるのです。
歯列矯正による不快感が、良質な睡眠を妨げ、髪の成長に必要なホルモン分泌を阻害してしまう。
これもまた、抜け毛が増えたと感じる間接的な要因の一つとして十分に考えられるでしょう。
歯列矯正の種類と抜け毛リスクの違い
一口に歯列矯正と言っても、その方法は様々。
ここでは、代表的な矯正方法ごとに、これまで解説してきた「金属アレルギー」や「口腔ケアのしやすさ」といった観点から、抜け毛に繋がりうるリスクの違いを見ていきましょう。
ワイヤー矯正(表側・裏側)
最も一般的で、歴史のある治療法がワイヤー矯正。
歯の表面(表側)または裏側(舌側)にブラケットという装置を接着し、そこにワイヤーを通して歯を動かします。
金属アレルギーのリスク:ブラケットやワイヤーには、ニッケルやクロムなどの金属が使用されることが多く、金属アレルギーをお持ちの方にとっては、アレルギー反応による皮膚炎や脱毛のリスクが最も懸念される治療法と言えます。
裏側矯正は装置が舌に触れやすいため、症状が強く出る可能性も指摘されています。
口腔ケアとストレス:装置が固定式で取り外せないため、歯磨きが非常に難しく、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
また、装置が目立つことへのストレス(表側の場合)や、発音のしにくさ、口内炎の発生頻度など、他の方法に比べて身体的・精神的なストレスを感じやすい側面もあります。
これらの点から、ワイヤー矯正は、間接的に抜け毛に繋がりうる要因を比較的多く含んでいる治療法と考えることができます。
マウスピース矯正
近年、人気が高まっているのが、透明なマウスピース型の装置を定期的に交換していくことで歯を動かす治療法です。
- 金属アレルギーのリスク:装置は医療用のプラスチックでできているため、金属をほとんど使用しません。そのため、金属アレルギーのリスクは極めて低いと言えます。矯正の過程で歯に「アタッチメント」という小さな突起を付けることがありますが、これもプラスチック製です。金属アレルギーが心配な方にとっては、非常に安心感の高い選択肢となるでしょう。
- 口腔ケアとストレス:食事や歯磨きの際には自分で装置を取り外すことができます。そのため、矯正前と同じように食事を楽しむことができ、栄養の偏りが起こりにくいです。また、歯磨きも普段通りに行えるため、口腔内を清潔に保ちやすく、虫歯や歯周病のリスクを低減できます。装置が透明で目立ちにくいため、見た目に関するストレスも少ないのが大きなメリットです。
ただし、1日20時間以上の装着が必要であり、自己管理が治療結果を大きく左右するという側面も持ち合わせています。
メタルフリー矯正(セラミックブラケットなど)
ワイヤー矯正の中でも、金属アレルギーに配慮した選択肢があります。
それが、ブラケットの素材を金属以外のものにする方法です。
- セラミックブラケット:歯の色に近い白色や透明のセラミック製のブラケットを使用します。審美性に優れ、金属アレルギーのリスクもありません。
- プラスチックブラケット:セラミック同様、審美性に配慮したプラスチック製のブラケットです。
これらのメタルフリーのブラケットを選択することで、金属アレルギーによる脱毛のリスクは大幅に回避できます。
ただし、注意点として、ブラケットはメタルフリーでも、歯を動かすための主役である「ワイヤー」は金属製であることがほとんどです。
アレルギー反応が強い方は、ワイヤーの素材(チタン製など、比較的アレルギーを起こしにくいもの)についても歯科医師とよく相談する必要があります。
歯列矯正中にできる抜け毛対策
もし、歯列矯正中に抜け毛が気になり始めたら、どのように対処すればよいのでしょうか。
原因として考えられる要因ごとに、ご自身でできる対策をご紹介します。
ストレスケアを徹底する
矯正治療中のストレスをゼロにすることは難しいですが、上手に付き合い、軽減することは可能です。
- 自分なりのリラックス法を見つける:ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる、好きな音楽を聴く、アロマを焚く、軽いストレッチやヨガを行うなど、心身がリラックスできる時間を作りましょう。
- 痛みを我慢しない:調整後の痛みが強い場合は、無理せず歯科医院から処方された、あるいは市販の鎮痛剤を適切に使用してください。痛みを我慢し続けることは、大きなストレスになります。痛みが長引く場合は、何か問題が起きている可能性もあるため、早めに歯科医師に相談しましょう。
- 治療の進捗を確認する:定期的な調整の際に、自分の歯がどのように動いているのか、治療が順調に進んでいるのかを歯科医師に確認するのも良いでしょう。ゴールが見えることで、モチベーション維持に繋がります。
栄養バランスの取れた食事を心がける
食事がしにくい時期でも、髪の健康を維持するための栄養は不可欠です。
- 食べやすい調理法を工夫する:肉や野菜は、細かく刻んだり、ミキサーにかけたりして、スープやポタージュ、スムージーなどにすると摂取しやすくなります。煮込み料理も、食材が柔らかくなるのでお勧めです。
- 高タンパク・高栄養の食品を選ぶ:豆腐や納豆、卵、ヨーグルト、プロテインドリンクなどは、柔らかくてタンパク質が豊富なため、矯正中に最適です。
- 髪に良い栄養素を意識する:タンパク質、亜鉛、鉄分、ビタミン類を意識的に食事に取り入れましょう。例えば、牡蠣やレバーが食べにくい場合は、サプリメントで亜鉛や鉄分を補うのも一つの有効な手段です。ただし、サプリメントを利用する際は、過剰摂取にならないよう注意が必要です。
丁寧なオーラルケアを習慣化する
口腔内を清潔に保つことは、全身の健康、ひいては頭皮環境を守ることに繋がります。
- 矯正用の歯ブラシを活用する:タフトブラシや歯間ブラシ、矯正用フロスなど、専用の器具を使って、ブラケットの周りやワイヤーの下を丁寧に磨きましょう。
- フッ素配合の歯磨き粉や洗口液を使う:虫歯予防効果のあるフッ素を積極的に活用し、歯質を強化しましょう。
- 定期的なプロのクリーニング:どんなにセルフケアを頑張っても、磨き残しは出てしまいます。歯科医院で定期的に専門的なクリーニング(PMTC)を受け、口腔内をリセットすることが重要です。
質の高い睡眠を確保する
髪の成長を促す成長ホルモンをしっかり分泌させるため、睡眠の質を高める工夫をしましょう。
- 寝室の環境を整える:寝室は暗く静かにし、快適な温度・湿度を保ちましょう。
- 就寝前の習慣を見直す:就寝前のスマートフォンやパソコンの使用は、ブルーライトが脳を覚醒させてしまうため控えましょう。カフェインの摂取も避けるべきです。
- 痛みで眠れない時の対処:就寝前に痛みを感じる場合は、鎮痛剤を服用するタイミングなどを歯科医師に相談しておくと安心です。
金属アレルギーが疑われる場合はすぐに相談
前述の通り、口の中だけでなく、全身に原因不明の皮膚症状や脱毛が見られる場合は、金属アレルギーの可能性を疑い、すぐに皮膚科と矯正歯科の両方に相談してください。
自己判断で放置することは絶対にやめましょう。
歯列矯正を開始してから抜け毛が増えたと感じるのはAGAやFAGAの影響かもしれない
上記の対策を実践しても、抜け毛が改善しない、あるいは悪化する一方である場合。
それは、歯列矯正とは全く別の、より根本的な脱毛症が原因である可能性を考える必要があります。
歯列矯正の開始時期と、脱毛症の発症時期が、偶然重なってしまったというケースは決して少なくありません。
AGA(男性型脱毛症)の可能性
AGA(Androgenetic Alopecia)は、成人男性に最も多く見られる脱毛症で、遺伝や男性ホルモンの影響が主な原因です。
メカニズム
男性ホルモンの一種である「テストステロン」が、頭皮に存在する「5αリダクターゼ」という酵素によって、より強力な「ジヒドロテストステロン(DHT)」に変換されます。
このDHTが、髪の毛の成長を妨げる信号を出すことで、毛髪のサイクル(毛周期)が乱れ、髪が十分に成長する前に抜け落ちてしまいます。
これが繰り返されることで、徐々に薄毛が進行します。
特徴
一般的に、生え際が後退していく(M字型)、あるいは頭頂部が薄くなる(O字型)、またはその両方が同時に進行する、といった特徴的なパターンがあります。
AGAは進行性の脱毛症であり、放置して自然に治ることはありません。
歯列矯正によるストレスが、AGAの進行を早める一因になることは考えられますが、根本的な原因は別に存在します。
FAGA(女性男性型脱毛症)の可能性
FAGA(Female Androgenetic Alopecia)は、女性に見られる薄毛の症状で、「女性型脱毛症」とも呼ばれます。
メカニズム
女性の体内にも男性ホルモンは存在しており、加齢やホルモンバランスの乱れによって女性ホルモン(エストロゲン)が減少し、相対的に男性ホルモンの影響が強くなることが主な原因と考えられています。
ストレスや生活習慣の乱れ、誤ったヘアケアなども、ホルモンバランスを崩し、症状を悪化させる要因となります。
特徴
男性のAGAのように特定の部分から薄くなるのではなく、頭部全体の髪の毛が細くなり、ボリュームが失われ、地肌が透けて見えるようになる「びまん性脱毛」という特徴があります。
分け目が目立つようになった、と感じる方が多いです。
歯列矯正に伴うストレスや栄養不足は、女性ホルモンのバランスに影響を与えやすく、FAGAの発症や進行の引き金となる可能性があります。
その他の脱毛症(円形脱毛症など)
自己免疫疾患の一種である「円形脱毛症」や、特定の薬剤の副作用、甲状腺機能の異常など、他の病気が原因で抜け毛が起こっている可能性も考えられます。
これらの場合、原因となっている病気の治療が最優先となります。
薄毛・抜け毛の専門的な治療という選択肢
セルフケアを続けても抜け毛に歯止めがかからない場合や、AGA・FAGAが強く疑われる場合は、自己判断で悩むのをやめ、専門家の力を借りることが最も賢明な選択。
薄毛・抜け毛の悩みは、早期に適切な対策を講じることで、その進行を食い止め、改善が期待できるからです。
AGA・FAGA専門クリニックへの相談
皮膚科でも相談は可能ですが、より専門的な診断と治療を望むのであれば、薄毛治療を専門とするクリニックへ相談することをお勧めします。
専門クリニックでは、まず丁寧なカウンセリングや診察、血液検査などを通じて、抜け毛の根本的な原因を特定します。
その上で、一人ひとりの症状や体質に合わせた、医学的根拠に基づいた治療法を提案してくれます。
- 内服薬:AGAの進行を抑制するフィナステリドやデュタステリド(男性のみ)、発毛を促進するミノキシジルなど、医師の処方が必要な治療薬があります。女性には、パントガールやスピロノラクトンといった内服薬が用いられることがあります。
- 外用薬:ミノキシジルを配合した塗り薬は、市販でも購入可能ですが、クリニックではより高濃度のものを処方してもらえます。
- 注入治療・その他:頭皮に直接、発毛を促す有効成分を注入する「メソセラピー」や、自身の血液から成長因子を抽出して注入する「PRP療法」、LEDの光を照射する治療など、様々な選択肢があります。
抜け毛はデリケートな悩みだからこそ、一人で抱え込まずに専門医に相談することが、解決への一番の近道。
近年では、オンラインで相談できるクリニックも増えており、気軽に専門家の意見を聞くことが可能になっています。
植毛
内服薬や外用薬での改善が難しい場合や、すでに薄毛がかなり進行してしまった部分に対しては、「自毛植毛」という選択肢も存在します。
これは、AGAの影響を受けにくい後頭部や側頭部の自分自身の髪の毛を、毛根ごと採取し、薄毛が気になる部分に移植する外科的な手術です。
- メリット:移植した髪の毛は、元の場所の性質を引き継ぐため、生着すればその後も生え続け、メンテナンスの必要がありません。自分自身の髪なので、見た目や手触りも非常に自然です。
- デメリット:外科手術であるため、費用が高額になる傾向があります。また、一度に移植できる本数には限りがあり、ドナーとなる髪の毛が十分にないと施術が難しい場合があります。
植毛は、失われた髪を取り戻すための最終手段の一つとして、非常に有効な治療法。
専門クリニックでは、このような外科的なアプローチについても相談することができます。
まとめ:歯列矯正で抜け毛が増えたと感じたら治療専門クリニックへ相談しよう
記事のポイントのまとめです。
今回は、歯列矯正で抜け毛が増えるのか?考えられる原因と対策を解説しました。
記事の要点を改めて整理します。
- 歯列矯正と抜け毛の間に、直接的な因果関係を証明する医学的根拠は確立されていません。
- しかし、矯正に伴う「ストレス」「金属アレルギー」「栄養不足」「口腔内環境の悪化」「睡眠不足」といった間接的な要因が、抜け毛を引き起こす、あるいは増やしてしまう可能性は十分に考えられます。
- 歯列矯正とは別にAGAやFAGAといった進行性の脱毛症が隠れている可能性があります。
歯列矯正で抜け毛が増えたと感じたら、自己判断で悩まず早期に薄毛治療の専門クリニックに相談することが、将来の髪を守るための最善策と言えます。