流産後の抜け毛はいつまで続く？原因と対策、FAGAの可能性も解説

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流産後の抜け毛は「分娩後脱毛症」と類似

この度は、心身ともにつらいご経験をされたことと存じます。

流産後に抜け毛が増えることは、多くの女性が経験する身体の正常な反応の一つであることがほとんどです。

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これは、妊娠によって大きく変動したホルモンバランスが、元の状態に戻ろうとする過程で起こる現象だからです。

しかし、すべての抜け毛が同じ原因とは限りません。

中には、身体からの別のサインが隠れている可能性や、対処が必要なケースも存在します。

はじめに、流産後の抜け毛について理解するためには、まず妊娠から出産（または流産）に至るまでの女性の身体の変化、特にホルモンの働きを知ることが重要です。

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実は、流産後に起こる抜け毛の多くは、出産後に多くの女性が経験する「分娩後脱毛症（産後の抜け毛）」と非常によく似たメカニズムで発生します。

妊娠中に髪が増える？女性ホルモンの役割

妊娠すると、女性の体内では二つの主要な女性ホルモン、エストロゲン（卵胞ホルモン）とプロゲステロン（黄体ホルモン）の分泌量が劇的に増加します。

これらのホルモンは、胎児が育ちやすいように子宮内膜を厚く保ち、妊娠を維持するために不可欠な役割を果たします。

このうち、エストロゲンには、髪の毛の成長に大きく関わる働きがあります。

私たちの髪の毛には「ヘアサイクル（毛周期）」と呼ばれる、成長しては抜け落ち、また新しく生えるというサイクルがあります。

ヘアサイクルは主に以下の3つの期間に分けられます。

1. 成長期（アナゲン期）：毛母細胞が活発に分裂し、髪が太く長く成長する期間。通常、髪全体の約85～90%を占め、2～6年続きます。
2. 退行期（カタゲン期）：毛母細胞の分裂が止まり、髪の成長がストップする期間。約2週間程度です。
3. 休止期（テロゲン期）：髪の成長が完全に止まり、毛根が浅くなって抜け落ちるのを待つ期間。約3～4ヶ月続き、この期間が終わると髪は自然に抜け落ちます。

妊娠中に分泌量が増えるエストロゲンには、この「成長期（アナゲン期）」を通常よりも長く維持させる作用があります。

そのため、本来であれば休止期に入り、やがて抜け落ちるはずだった髪の毛が、成長期に留まり続けることになるのです。

これが、妊娠中に「髪のボリュームが増えた」「髪が抜けにくくなった」と感じる主な理由です。

流産による急激なホルモンバランスの変化が引き金に

流産によって妊娠が中断されると、妊娠を維持するために大量に分泌されていたエストロゲンとプロゲステロンは、その役目を終えて急激に減少します。

身体が妊娠前の状態に戻ろうとする、自然なプロセスです。

このホルモンの急激な減少が、髪の毛に大きな影響を与えます。

これまでエストロゲンの作用によって成長期に留まっていた多くの髪の毛が、一斉に「休止期（テロゲン期）」へと移行するのです。

この現象は「休止期脱毛症」と呼ばれ、分娩後脱毛症や流産後脱毛症の正体です。

休止期に入った髪の毛は、すぐに抜け落ちるわけではありません。

前述の通り、約3～4ヶ月の休止期間を経てから自然に脱毛します。

そのため、流産を経験してから2～3ヶ月ほど経った頃に、突然抜け毛がごっそりと増えたように感じるのです。

これは異常なことではなく、ホルモンバランスの正常化に伴う一時的な現象と言えます。

流産週数と抜け毛の関係性

流産を経験した時期、つまり妊娠週数によって、抜け毛の程度に違いが出る可能性はあります。

一般的に、妊娠週数が進んでいるほど、体内のホルモン濃度は高く、その後の減少幅も大きくなります。

例えば、妊娠中期（12週以降）での流産は、妊娠初期（12週未満）の流産と比較して、ホルモンの変動がよりダイナミックになる傾向があります。

そのため、抜け毛の症状も強く感じられることがあるかもしれません。

ただし、これはあくまで一般的な傾向であり、ホルモンの変動に対する身体の反応には大きな個人差があります。

妊娠初期の流産であっても抜け毛を強く感じる方もいれば、中期以降の経験でもあまり気にならない方もいます。

抜け毛の量だけで、何かが悪いと判断する必要はありません。

なぜ流産後に抜け毛が起こるのか？考えられる4つの主な理由

流産後の抜け毛の最も大きな原因はホルモンバランスの変動ですが、それ以外にもいくつかの要因が複雑に絡み合い、症状を悪化させている可能性があります。

ここでは、考えられる主な4つの理由を詳しく見ていきましょう。

理由1：ホルモンバランスの急激な変動

前述の通り、これが最も主要な原因。

繰り返しますが、妊娠の維持のために高濃度に保たれていた女性ホルモン（特にエストロゲン）が、流産によって急激に減少することが直接的な引き金となります。

この結果、本来のヘアサイクルが一斉に同調するように休止期へと移行し、数ヶ月後にまとまった量の髪が抜け落ちる「休止期脱毛症」を引き起こします。

これは、身体が妊娠前の状態へと戻るための生理的なプロセスの一部であり、多くの場合、時間の経過とともに自然に回復へと向かいます。

しかし、このホルモンの「揺り戻し」の時期は、身体にとって非常にデリケートな状態。

他の要因が加わることで、抜け毛の症状が長引いたり、より深刻に感じられたりすることがあります。

理由2：心身への大きなストレス

流産という経験は、身体的な負担だけでなく、言葉では言い表せないほどの大きな精神的ストレスを伴います。

深い悲しみ、喪失感、自分を責める気持ち、将来への不安など、様々な感情が心に重くのしかかります。

このような強い精神的ストレスは、自律神経のバランスを乱す大きな要因となります。

自律神経は、私たちの意思とは関係なく心臓や血管、内臓の働きをコントロールしている神経。

自律神経には、活動時に優位になる「交感神経」と、リラックス時に優位になる「副交感神経」の二つがあります。

強いストレス状態が続くと、交感神経が過剰に優位になります。

交感神経には血管を収縮させる働きがあるため、頭皮の毛細血管も収縮し、血行不良を引き起こすのです。

頭皮の血行は、髪の毛を育てる「毛母細胞」に酸素や栄養を届けるための重要なライフライン。

血行が悪くなると、毛母細胞は十分な栄養を受け取れなくなり、健康な髪を育てることが困難になります。

その結果、髪が細くなったり、成長途中で抜けてしまったりと、抜け毛をさらに悪化させる原因になり得ます。

理由3：身体的な負担と栄養不足

流産に伴う処置（掻爬（そうは）手術など）や自然な排出は、身体に直接的なダメージを与えます。

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特に、出血量が多くなると、体内の鉄分が不足し、「鉄欠乏性貧血」の状態に陥りやすくなります。

鉄は、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの主成分。

ヘモグロビンは、肺で取り込んだ酸素と結合し、全身の細胞に酸素を送り届ける重要な役割を担っています。

もちろん、髪の成長を司る頭皮の毛母細胞も、活動のために多くの酸素を必要とします。

鉄分が不足してヘモグロビンが減少すると、全身が酸素不足の状態になります。

身体は生命維持に不可欠な臓器（脳や心臓など）へ優先的に酸素を送ろうとするため、髪の毛のような末端の組織への酸素供給は後回しにされてしまいます。

酸素不足に陥った毛母細胞は正常に機能できず、これもまた抜け毛や薄毛の深刻な原因となるのです。

また、流産後の精神的な落ち込みから食欲が湧かず、食事が偏ってしまうこともあるでしょう。

髪の毛は、そのほとんどが「ケラチン」というタンパク質でできています。

食事からのタンパク質摂取が不足すると、髪の原料そのものが足りなくなってしまいます。

他にも、髪の健康には亜鉛やビタミンB群、ビタミンEといった様々な栄養素が関わっており、栄養バランスの乱れは、抜け毛の回復を遅らせる要因となります。

理由4：他の病気が隠れている可能性

多くの場合、流産後の抜け毛は一時的なものですが、ごく稀に、流産というイベントをきっかけに、別の病気が表面化することがあります。

抜け毛の原因が、ホルモンバランスやストレスだけではない可能性も念頭に置いておく必要があります。

特に注意したいのが、「甲状腺機能の異常」です。

甲状腺は、のどぼとけの下にある蝶のような形をした臓器で、身体の新陳代謝を活発にする甲状腺ホルモンを分泌しています。

この甲状腺ホルモンは、ヘアサイクルにも影響を与えています。

出産や流産は、免疫系に大きな変化をもたらすため、自己免疫疾患である「橋本病（甲状腺機能低下症）」や「バセドウ病（甲状腺機能亢進症）」が発症・悪化するきっかけになることがあります。

• 甲状腺機能低下症（橋本病など）：甲状腺ホルモンの分泌が不足し、新陳代謝が低下します。全身の倦怠感やむくみ、寒気といった症状とともに、髪の成長が遅れて全体的に髪が薄くなる「びまん性脱毛」が起こることがあります。
• 甲状腺機能亢進症（バセドウ病など）：甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、新陳代謝が異常に活発になります。動悸や息切れ、多汗、体重減少などの症状とともに、抜け毛の増加が見られることがあります。

これらの甲状腺疾患による抜け毛は、流産後の休止期脱毛症と見分けがつきにくいことがあります。

もし、抜け毛以外に上記のような全身症状がみられる場合は、一度医療機関で相談することが重要。

その他にも、膠原病などの自己免疫疾患が抜け毛の原因となることもあります。

流産後の抜け毛が続く、改善しない…それはFAGA（女性男性型脱毛症）の可能性も

流産後の抜け毛は、多くの場合、1年ほどで自然に軽快します。

しかし、「1年以上経っても抜け毛が減らない」「むしろ分け目がどんどん目立ってきた気がする」という場合、それは一時的な休止期脱毛症ではなく、別のタイプの脱毛症が関わっている可能性を考える必要があります。

その代表的なものが、「FAGA（女性男性型脱毛症）」です。

FAGA（女性男性型脱毛症）とは？

FAGAは「Female Androgenetic Alopecia」の略で、日本語では「女性男性型脱毛症」と呼ばれます。

成人女性に見られる薄毛の中で最も多い原因の一つで、ゆっくりと進行していくのが特徴です。

男性のAGA（男性型脱毛症）のように生え際が後退したり、頭頂部だけが禿げあがったりするケースは少なく、FAGAでは頭頂部や分け目を中心に、髪の毛が全体的に細く、少なくなる「びまん性脱毛」という状態を呈することが一般的。

そのため、初期段階では変化に気づきにくく、「なんとなく全体のボリュームが減った」「地肌が透けて見えるようになった」といった自覚症状から始まることが多いです。

FAGAの主な原因は、遺伝的な素因や女性ホルモンの減少、そして男性ホルモンの影響などが複雑に関わっていると考えられています。

なぜ流産後にFAGAが顕在化することがあるのか？

もともとFAGAになりやすい体質（遺伝的素因）を持っていた方が、流産という出来事をきっかけに、その症状がはっきりと現れ始めることがあります。

これには、ホルモンバランスの変化が深く関わっています。

髪の健康を保つ働きのある女性ホルモン「エストロゲン」は、流産後に急激に減少します。

一方で、体内には副腎や卵巣で作られる微量の男性ホルモンも存在します。

エストロゲンが減少すると、相対的に男性ホルモンの影響が優位になることがあります。

この男性ホルモンが、毛根にある特定の酵素と結びつくことで、ヘアサイクルを乱し、髪の成長期を短くしてしまう物質に変化します。

その結果、髪の毛が十分に太く、長く成長する前に抜け落ちてしまい、徐々に薄毛が進行していくのです。

これがFAGAの基本的なメカニズムです。

つまり、流産後のホルモンバランスの乱れが、それまで潜在的に持っていたFAGAのスイッチを押してしまい、症状を「顕在化させるきっかけ」となってしまう可能性があるのです。

「休止期脱毛症」と「FAGA」の見分け方の目安

流産後に始まった抜け毛が、一時的な「休止期脱毛症」なのか、それとも進行性の「FAGA」の始まりなのかを、ご自身で完全に見分けることは困難。

しかし、いくつかの目安を知っておくことで、専門家へ相談するタイミングを判断する助けになります。

目安1：期間

• 休止期脱毛症：通常、流産後1年以内には抜け毛の量が落ち着き、回復の兆しが見られます。
• FAGAの可能性：1年以上経過しても抜け毛の量が減らない、または薄毛がゆっくりとでも進行し続けている場合。

目安2：抜け毛の質

• 休止期脱毛症：太く健康な、成長しきった髪の毛が多く抜けるのが特徴です。
• FAGAの可能性：抜けた髪の中に、細くて短い、弱々しい毛が混じる割合が増えてきた場合。これはヘアサイクルが短縮しているサインです。

目安3：薄毛の範囲

• 休止期脱毛症：頭部全体から、まんべんなく髪が抜ける傾向があります。
• FAGAの可能性：特に頭頂部の分け目部分の地肌が、以前より目立つようになってきた場合。「クリスマスツリー型」と呼ばれるように、分け目を中心に地肌の露出が広がるのが典型的なパターンです。

これらのサインが複数当てはまる場合は、単なる流産後の抜け毛と自己判断せず、FAGAの可能性を視野に入れて専門的な診断を受けることを強くお勧めします。

不安な場合は専門のクリニックへ相談を

抜け毛に関する悩みは非常にデリケートであり、一人で抱え込んでいると、不安がさらなるストレスを生む悪循環に陥りがちです。

もし、ご自身の抜け毛の状態に少しでも不安や疑問を感じるなら、勇気を出して専門のクリニックに相談することが、問題解決への最も確実な一歩となります。

なぜ早期相談が重要なのか？

早期に専門家へ相談することには、いくつかの重要なメリットがあります。

FAGAは進行性の脱毛症

第一に、FAGAは進行性の脱毛症であるためです。

もし抜け毛の原因がFAGAであった場合、残念ながら自然に治ることは期待できません。

放置すれば、薄毛はゆっくりとですが着実に進行していきます。

しかし、早期に適切な治療を開始することで、その進行を食い止め、症状を改善させることが十分に可能。

治療の開始が早ければ早いほど、良好な結果が得られやすいのです。

抜け毛の真の原因を特定

第二に、抜け毛の真の原因を特定するためです。

前述の通り、抜け毛の原因はFAGAだけではありません。

甲状腺疾患や鉄欠乏性貧血など、治療が必要な別の病気が隠れている可能性もあります。

専門医による問診や血液検査などを受けることで、これらの疾患の有無を正確に鑑別し、原因に合った適切な対処法を知ることができます。

自己判断で市販の育毛剤などを使っても、原因が異なれば効果は期待できず、時間とお金を無駄にしてしまうことにもなりかねません。

FAGA専門クリニックで行われる主な治療法

FAGA専門クリニックでは、医師の診断に基づき、以下のような治療法が組み合わせて行われることが一般的。

ここで紹介するのはあくまで一例であり、必ず医師の診察と指導のもとで行われるものです。

内服薬治療

• スピロノラクトン：もともとは利尿薬や降圧剤として使われる薬ですが、男性ホルモンが毛根に作用するのをブロックする働きがあるため、FAGA治療に応用されます。
• ミノキシジル（内服）：血管を拡張し、頭皮の血流を増加させることで、毛母細胞に栄養を届けやすくします。また、毛母細胞そのものに働きかけて、発毛を促進する効果が期待できます。

外用薬治療

• ミノキシジル（外用）：日本で唯一、発毛効果が認められている塗り薬の成分です。頭皮に直接塗布することで、毛根に働きかけ、発毛を促します。女性用には濃度の低いものが推奨されています。

注入治療

成長因子（グロースファクター）などを配合した薬剤を、注射や特殊な機器を用いて頭皮に直接注入する方法。

毛髪の成長を促す成分をダイレクトに届けることで、発毛をサポートします。

内服薬に抵抗がある方や、より積極的な効果を求める方に選択されることがあります。

これらの治療には、それぞれ期待できる効果と、副作用などのリスクが伴います。

専門クリニックでは、治療開始前に必ず医師から詳しい説明がありますので、不安な点や疑問点はすべて質問し、十分に理解・納得した上で治療を選択することが何よりも大切です。

まとめ：流産後の抜け毛が気になるならまずは専門クリニックに相談

記事のポイントのまとめです。

この記事では、流産後に抜け毛が多くなる理由を詳しく解説してきました。

最後に、重要なポイントを改めて整理します。

• 流産後の抜け毛の主な原因は、妊娠状態の終了に伴う女性ホルモンの急激な減少による「休止期脱毛症」です。これは多くの場合、時間とともに自然に回復する一時的な現象です。
• しかし、その背景には、精神的ストレスによる血行不良や、身体的負担による栄養不足など、複数の要因が複雑に絡み合っている可能性があります。
• 抜け毛が1年以上続く、細く短い毛が抜ける、分け目の地肌が目立つといったサインが見られる場合は、進行性の「FAGA（女性男性型脱毛症）」が顕在化した可能性も考えられます。
• 抜け毛の原因を自己判断するのは難しく、時には別の病気が隠れていることもあります。不安を一人で抱え込まず、皮膚科やFAGA専門クリニックといった専門家に相談することが、解決への第一歩です。

流産というつらい経験の後に、抜け毛という新たな悩みが加わることは、本当におつらいことと思います。

実は、それはあなたの身体が懸命に元の状態に戻ろうとしているサインでもあります。

それは、専門家の助けを求めるべきタイミングかもしれません。

この記事が、あなたの不安を少しでも和らげ、次の一歩を踏み出すための助けとなれば幸いです。